「関わりことば」は、人や物とどう向き合い、関わりを持っていけばよいのかを学ばせてくれます。「関わりことば」は、人や物への適切な認識を子どものなかに形作り、関わり方を教えてくれることばといえます。

 子どもが伸びる26のことば

「関わりことば」は、子どもに、人や物とどう向き合い、関わりを持っていけば良いのかを学ばせてくれます。同時に、私たち大人が子どもと接するときに、子どもとどう関わっていけばよいのかを教えてくれることばでもあります。30余年の療育指導の中で、子どもの発達で大切なのは、自分も含めた人や物との付き合い方だと思うようになりました。広い意味での社会性です。「関わりことば」の良さは、わかりにくい社会性を具体的に示してくれるところだと思います。・・・関わりことばの会代表 湯汲英史【1953年生 早稲田大学卒 (社)発達協会常務理事 心理・言語担当 言語聴覚士 精神保健福祉士】

発達をうながす関わりことば

子どもは人として完成された形で生まれてきません。未熟な状態で生まれ、まわりの人や物と関わるなかで、少しずつ発達していきます。この発達には二つの目的があるとされています。一つは、世界への認識を深め、自分なりに考え判断できるようになることです。これを「自己形成」といいます。もう一つは、自分なりに行った判断を、まわりに受け入れられてもらえる形で表現できるようになることです。これを「社会化」といいます。「関わりことば」は、子どもに、人や物とどう向き合い、関わりを持っていけばよいのかを学ばせてくれます。同時に、わたしたち大人が子どもと接するときに、子どもとどう関わっていけばよいのかを教えてくれることばでもあります。関わりことばは、大人が努めて子どもたちに語りかけていかなくてはならないことばです。

社会性が幼いこととその理由

人の話を座って聞けない子がいます。乱暴が目立つなど、自分の動きをコントロールできない子がいます。自分のしたいことができないと、自分の気持ちを抑えられずに大騒ぎをする子がいます。人の気持ちがわからない、自分のことしか考えない、そう思える子がいます。そういった子たちは、「社会性が幼い」と評されることもあります。年齢にあった社会性が育っていないといえます。言い換えれば、歳相応に「自己形成」と「社会化」が進んでいないといえます。実はこういう子が、ADHD(注意欠陥・多動性障害)や学習障害、あるいはアスペルガー症候群など自閉的な傾向を持つと思われていることもあります。軽度の知的障害とされることもあります。確かにそういう子がいるのは確かです。医療機関には、そういう子たちが受診してきます。ただ大人の関わり方も含め、育て方に問題があるために、社会性や物事への意欲が育っていない子がいるのも事実です。こういう子は、まわりの大人がことばかけをはじめとし、関わり方を変えるだけで状態がよくなっていきます。このように短期間で変化する子は、発達に障害があるとはいえません。発達に問題を持つ子でも、実際に関わり方を変えれば、良い方に変化していきます。

子育に必須の26のことば

発達に障害を持つ子ばかりではなく、いまの時代だからこそ、子育ての際には「関わりことば」という視点が必要だと思います。以前はごく当たり前と思われていたことが、現在は見えにくくなっていることが影響しているのでしょうか。親も含め大人が、子育てや指導でのしっかりとした自信を持てないことも関係しているのでしょうか。あるいは大人自身が、人や物との関わり方について混乱しているのかもしれません。だから、以前には当たり前に子どもに伝えていた「関わりことば」が、いまは使われなくなってきたのかもしれません。関わりことばは決して難しいことばではありません。ただ、そこに含まれている意味にはとても深いものがあります。